モスクワ国立音楽院に招かれて ―『源氏物語』『古事記』の旅[2026年春]
『源氏物語』『古事記』をモスクワとサンクトペテルブルクで公演

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本政府はロシアへの経済制裁を実施しています。一方、ロシア側でも日本は「非友好国」として認定され、日本とロシアは政府間で厳しい対立関係が続いています。
そんな状況の中でしたが、モスクワ国立音楽院の招聘により、私たちはモスクワとサンクトペテルブルクの2都市で、「古事記」と「源氏物語」を上演。民間での芸術文化交流が実現しました。
モスクワ国立音楽院は、世界有数の音楽教育機関として知られ、ジュリアード音楽院(ニューヨーク)やパリ音楽院と並ぶ、世界トップクラスの音楽院の一つです。同音楽院の「世界音楽文化センター」で国際プロジェクトの企画・監修を担うマルガリータ・カラティギナ准教授の招聘により、サンクトペテルブルクとモスクワの2都市での上演が実現しました。現在の国際情勢の中、日本から招聘するのは並大抵のことではなかったと思います。


(中央女性:カラティギナ准教授)
カラティギナ准教授は、モスクワ音楽院で音楽理論・音楽史・世界の伝統音楽を長年にわたって教えてきた音楽学者であり、日本伝統音楽研究の第一人者としても知られています。箏の実技研修を受けるなど日本文化への造詣も深く(※1)、能や古典芸能にインスパイアされた舞台作品も数多く手がけてきました。その日本との文化交流への貢献は日本政府からも高く評価され、2016年に旭日小綬章(金光綬章付)を受章されています。
※1...マルガリータ・カラティギナ准教授は、沢井忠雄箏流京都支部長の岩堀恵子氏による指導のもと、日本の伝統音楽の追加研修コースを受講。師範の資格を取得され、自身の道場を開設する権利を得られているそうです(2003年)。
私たちの芸術監督アニシモフは「民間での文化交流こそ、最高の外交だと思います」と述べています。この言葉が、今回の活動の全てを表していると感じています。多くの障壁を乗り越えて実現へと導いてくださったカラティギナ准教授に、心から感謝いたします。
公演の日程は以下のとおりです。
3月26日
ロシア・サンクトペテルブルク到着
3月28日
『源氏物語』第1回公演
3月29日
『源氏物語』第2回公演
アレクサンドリンスキー劇場・小ホールにて上演。
終演後、夜行列車にてモスクワへ移動。

リハーサル時の撮影

リハーサル時の撮影

リハーサル時の撮影
3月31日
『源氏物語』第3回公演
モスクワ「作曲家の家」ホールにて上演。


リハーサル時の撮影

リハーサル時の撮影
4月2日
「古事記」抜粋公演(第2幕)
モスクワ「ザリャージェ・コンサートホール」にて上演。


終演後、アニシモフ氏とカラティギナ氏に花束が送られました

終演後、アニシモフ氏とカラティギナ氏に花束が送られました
4月5日
音楽劇「陰陽師 鉄輪恋愛輪舞曲」公演(夢枕獏 作/松下功 作曲)
モスクワ「作曲家の家」ホールにて上演。
※「陰陽師 鉄輪恋愛輪舞曲」公演については、別の記事で詳細を報告いたします。

(夢枕獏 作/松下功 作曲)

(夢枕獏 作/松下功 作曲)

(夢枕獏 作/松下功 作曲)
終演後の盛大なカーテンコール
いずれの公演も大変好評をいただきました! 特にサンクトペテルブルクでの『源氏物語』公演は、チケットが早々に完売、立ち見席を設けなければならないほどでした。かねてからアニシモフ氏より「ロシアの女性は源氏物語に関心が高い」と聞いていましたが、ファンクラブもあるそうです。
どの舞台でも、ロシアのお客様は皆、静かに集中して私たちの公演を見てくださったのが印象的です。そして幕が下りると、割れんばかりの拍手で私たちを暖かく迎えてくださいました。終演後には劇場の外で「ありがとう!」と日本語で声をかけてくれるお客様もいて、日本の文化に興味を持ってくださっているロシアの方が多いことに本当に心が温まりました。
また、これらの公演は、モスクワ・サンクトペテルブルク両市のテレビでも報道されたほか、ロシアのニュースメディア『スプートニク日本』がXにポストしています。特に『スプートニク日本』のX投稿では日本語の字幕付きで映像がご覧になれます。
私たちの公演が、ロシアのメディアで紹介されました
テレビ「サンクトペテルブルク」での紹介
サンクトペテルブルクの市営テレビ局が『源氏物語』公演を報道。
記事の中の動画含め、ロシア語なので、ブラウザで開いた後、「日本語へ翻訳」し、ご覧ください。
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《ロシア語記事の要約はこちら》
「禁じられた愛と儚さの哲学──東京の俳優たちがサンクトペテルブルクで舞台「源氏物語」を上演。」
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《要約》
サンクトペテルブルクで、劇団TOKYO NOVYI・ARTによる舞台「源氏物語」が上演された。日本文学の傑作が、宮廷貴族がまとった優雅な十二単を思わせる衣装をまとい、舞台上でよみがえった。
東京から訪れた俳優たちは、紫式部の古典文学の名作『源氏物語』をもとにしたこの作品を披露した。演出全体に日本文化の精神、哲学、美意識が息づき、衣装も宮廷の華やかで儀礼的な世界を象徴している。
「この作品の核心は“もののあはれ”──すなわち人生の儚さとその中にある美しさです。これはこの舞台にとって最も大切な理念です。世界はあまりに変わり、混沌としてしまいました。だからこそ、こうした作品が今こそ必要なのだと思います」と、ロシア連邦功労芸術家であり劇団の芸術監督であるレオニード・アニシモフ氏は語った。
「イズベスチヤ」での紹介
ロシアの有力ニュースメディア「ИЗВЕСТИЯ(イズベスチヤ)」が、モスクワでの『古事記』公演について報道。
※残念ながら、ロシアでの記事は現在視聴不可になったようです。ただ現時点では英語版で記事を見ることが出来ますが、こちらには動画が入っていません。
ロシア語版
https://iz.ru/2071921/2026-04-03/vecher-iaponskoi-kultury-sostoialsia-v-moskve
英語版
https://en.iz.ru/en/2071921/2026-04-03/evening-japanese-culture-was-held-moscow
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《ロシア語記事の要約はこちら》
「モスクワで日本文化の夕べが開催された。」
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ロシアでは近年、日本文化への興味が急速に広まっている。モスクワでは、劇団TOKYO NOVYI・ARTによる特別公演が行われた。これほどのレベルの俳優たちがロシアを訪れるのは、実に久しぶりのことだ。
劇団TOKYO NOVYI・ARTが「ザリャージエ」コンサートホールで特別公演を行った。同公演では、第1部に尺八や和太鼓など伝統楽器の演奏、能面や和装を用いた舞台、そして第2部で『古事記』の抜粋上演が行われ、日本文化を象徴する舞台が披露された。
劇団は25年前、ロシアの演出家レオニード・アニシモフが東京で創設したもので、スタニスラフスキー・システムと日本の世阿弥の演劇体系を融合させている。日本ではギリシャ悲劇やシェイクスピア、チェーホフ作品も上演しており、国際的な演劇交流を進めている。
今回が初のロシア訪問となる俳優も多く、実際に現地を訪れたことで、ロシア文化への理解が深まったと語っている。また、公演にはモスクワ音楽院の協力が大きく、日本太鼓アンサンブル〈雅 Miyabe〉など、ロシア人音楽家による日本楽器の演奏も披露された。
「X」での紹介
ロシアのメディア「スプートニク日本」がXにポストしてくださいました。この記事は以下のリンクから、いつでもご覧になれます。
さらに、記事内の動画には日本語字幕が付いています。ぜひご覧ください。
〈Xでのポスト記事〉
🔗https://x.com/sputnik_jp/status/2043936222062752156

《Xのポスト要約はこちら》
【日本文化は女性の文化 ロシア人芸術監督が率いる東京の劇団、ロシアで源氏物語を披露】
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TOKYO NOVYI・ARTは2026年春、モスクワ・サンクトペテルブルクの各劇場で『源氏物語』『古事記』を上演し、いずれも満員御礼となりました。サンクトペテルブルクではチケットが早々に完売。日本語上演・字幕という形式にもかかわらず、ロシアの観客は真剣なまなざしで舞台に見入っていました。
芸術監督レオニード・アニシモフは「日本文化とは女性の文化である」と語ります。8年をかけて取り組んだ『源氏物語』は、スタニスラフスキー・システムと能のスタイルを融合した独自の演出で上演されました。衣裳を担当した時広真吾は「美に力あり」という言葉でこの旅を振り返っています。
なお、今回の公演には、「源氏物語」の監修をご担当いただいた釋 潮叡氏(日蓮宗僧侶)、ムーブメント指導の山本光洋氏(パントマイム)、衣装デザイナーの時広真吾氏にもご同行いただきました。滞在中いつも私たちを暖かくサポートいただき、心より感謝いたします。
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